『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』:イヴがズルくて気に入らないわ!!

god_help_the_girl

2015.8.11 シネマカリテ

『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』/スチュアート・マードック/イギリス/2014 ★★

・・・映画界には、メンヘラ系小悪魔女というのがいます。これを「個性的で魅力的な女性」として描く映画はけっこう多いです。私はそれが非常に苦手です。この映画もそういう映画でした。なので、評判が良いにも関わらず、私にはあまり良いと思えませんでした。感想はネタバレあります。

【あらすじ】
心療病院の入院患者であるイヴ(エミリー・ブラウニング)は、音楽が好きで、病院を抜け出して観に行ったライブでジェームズ(オリー・アレクサンデル)というギター弾きの青年と出会う。二人は一緒に暮らすことになり、ジェームズが作曲を教えているというキャシー(ハンナ・マリー)ともバンド仲間となる。三人は一緒に音楽を作ることに喜びを感じ、ライブを行ったりカヌーで旅をしたりする。

【感想】
この映画を監督したのは言うまでもなくベル・アンド・セバスチャンのフロントマンであるスチュアート・マードックです。私は確か高校1年のときに、『バアフアウト!』か何かでカジヒデキが良いと言っていた、という理由で初めてベルセバの『Boy with the Arab Strap』(1998)を聴いて、それから大好きになって本当によく聴いていて、今でも初期の赤・緑・黄色(・水色)はよく聴いています。当時の私には、あの「アコースティックで室内楽的で今にも消えそうなボーカルという音のわりに、歌詞が残酷」というのがとてもかっこよく感じました。あと、クラスで誰も聴いている人がいなかったので、「(中3で10キロ太ったせいで流行りのX-girlのほっそいデニムとか履けないし履いてる女子に強い敗北感を覚えるけど)私はベルセバとか聴いてるし」という“音楽好きの私”を担保してくれる存在でもありました。

無論、大学に入ったらベルセバ好きな女子なんてゴロゴロいたわけなんですが、まぁなんていうか、私にとっては、「とりあえず一番安いストラトキャスターを買ってはみるもののバンド組む仲間がいないしFは押さえられない」とか、「楽器店のメンバー募集の張り紙を見て連絡してみたりするものの会ってみると微妙に違ったり違うと思われたりして結局バンドはできない」とか、「X-girlのデニムは履けないから似たような服を着てみたけど決定的に何かが違う」とか、そういうのが青春だったわけです。「思い描く自分像に近付きたくてあがいてはみるものの、到底そういうふうにはなれなかった」のに、20代も後半になってから振り返ってみると、「ああ、あの時にはもう戻れないんだな」と思わずにはいられない何かがやっぱりある。私の中ではそれが青春です。

で、この映画です。

まず冒頭でも述べましたが、主人公がメンヘラです。しかも、ほどよく。ほどよくというのは、「ぶっ壊れて他人にドン引きされたりすることはなく、むしろ心の傷がアーティスティックな才能に昇華し、且つ影を帯びた人物像が異性を魅了してやまない」という羨ましすぎるタイプのメンヘラなのです。こんな奴いるかよ!と言いたいです。しかもこのイヴ、本ばかり読んで食べ物は食べないのです。それを自分で歌にしているのです。ふざけんな!食えよ!!!と叫びたいです。よって、羨ましさも相まってか、私はこういうほどよいメンヘラ女子が「魅力的な女の子」として描かれる映画がとっても苦手なのです。そもそも自分に好意を持っている優しい男のベッドに「嫌な夢を見たの。2分間だけいい?」と言って潜り込んだり、「雨でぬれたから脱ぐわ」と言ってパンツ一丁になったり、普通に悪女だろ!

ちょっと感情的になりすぎましたが、とにかくこの映画は『女は女である』とか『はなればなれに』あたりが意識されたカラフルでポップでオシャレな半ミュージカル映画で、イヴには髪型からして間違いなくその頃のアンナ・カリーナが重ねられているのだと思います。なので奔放だったり男を惑わせたりするのは百歩譲って仕方がないとしましょう。しかし、バンドを組んだ途端初ライブにめちゃくちゃ客が入ったり、才能があるからと音大に入ることを勧められたり、惜しまれつつ皆の前から去ったり、もうなんていうか、うまくいきすぎです。おとぎ話なんだな、と思えばそれまでなのですが、主人公が足掻くことがないので、青春映画にとって欠かせないはずの「もう戻れないあの頃感」を感じることができません。同じ青春系バンド映画の『青春デンデケデケデケ』大林宣彦/1992)なんかはそのへんもすごく良く出来ていたのですが。まぁそもそもこの『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』は、青春映画である前に『女は女である』ばりの、または『ロシュフォールの恋人たち』ばりの、オシャレでポップなミュージカル映画であることを志向したのかもしれません。だって監督はミュージシャンなんだし。でも、やっぱりそれだけじゃ良い映画とは言わないんじゃないかなぁ、と思います。あと、舞台は現代なのに、やたらカセットとかレコードとかラジオとか、古いものだけを登場させて全肯定しているのもちょっと気になりました。趣味としてはそれで良くても、映画としてそれを全肯定して提示するのは能天気すぎるような。って、考えすぎかもしれませんが。もっと単純に楽しめば良かったのかも。

なんかダラダラ書いたわりに結局「イヴがズルくて気にいらないわ!!」と言っているだけの感想文になっているような気がしてきました。白状すると、私はジェームズが非常に好みだし。にしても、これがスチュアート・マードックの世界なのかぁ。『Dear! Catastorophe Waitress』ぐらいまでしかまともに聴いてないから言えませんが、私の中ではベルセバってもっと素朴で暗くて繊細なイメージで、この映画みたいなカラフルでキラキラした感じとは違ってました。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中