『EDEN エデン』ダフト・パンクを全く知らずに観たら面白くないかも

eden

2015.6.27 有楽町朝日ホール(フランス映画祭2015)

『EDEN エデン』/ミア・ハンセン・ラヴ/フランス/2014 ★★★

【あらすじ】
1990年代からのフレンチ・エレクトロミュージックシーンを舞台として一人の男の栄光と挫折を描いた青春映画で、監督ミア・ハンセン・ラヴの兄であるスヴェン・ラヴが主人公ポールのモデルとなっている。
1992年、20歳そこそこのポール(フェリックス・ド・ジヴリ)は、“ガラージ”にハマって夜な夜なクラブへ繰り出す日々を送っている。当時こうした音楽を聴いている若者は少数だったため、同じような趣味の者たちは自然と顔見知りになり、ちょっとしたコミュニティのようなものが出来ていた。その中には今や世界的なビッグアーティストとなったダフト・パンクもいた。ポールはどんどん新しいガラージの曲を発掘し、シーンを牽引するDJとなる。しかしそんな栄光の日々も長くは続かず・・・。

【感想】(ネタバレあり?というか、ネタバレというほどのストーリーのある映画ではありません)
まず思ったのは、これ、ダフト・パンクを知らない人が観ても全く面白くないだろうな、ということでした。まぁまずそういう人はこの映画を見ようと思わないかもしれませんが。

この映画は、基本的に主人公ポールとダフト・パンクが、はじめは同じようなところにいたのに、片や借金まみれのドラッグ中毒、片や世界的ビッグアーティストというように、大きく差が開いていくところに愛しさと切なさと心強さとを感じる作りになっています。しかしながら、映画の中では“One More Time”がガンガン流れたりしながらも、それがどのくらいヒットしたのかなどの説明は全然なく(「大ヒットだ」ぐらいのセリフはあったかもしれませんが)、ダフト・パンクを知らなかったらその差がよくわからなかったかもしれません。なのでダフト・パンクが超ビッグアーティストであることは太陽が東から昇るぐらい自明のこととして知っている前提の映画だと思います。ちょっとカッコつけた男子学生が、狙ってる女子を連れてこの映画を観に行っても、女子がダフト・パンクを知らなかったら「つまんなかった」「マッドマックスのほうが面白かった」と言われる事うけあいです。つまり、この映画はダフト・パンクを知らない人が観ても楽しめるほどの出来ではない、と私は思いました。

今の日本人でダフト・パンクを知らない人がどのくらいいるのかよくわかりませんが、例えば私の職場の女子たちが知っているとは思えず、逆に友人の中に知らない人がいるとは思えません。なんか自分も凄く詳しいような書き方をしてしまいましたが、私も実際そのあたりの音楽に詳しいわけでは全くありません。もともと電子音楽には疎いし、シャレた人たちの集まるクラブなんかも数回しか行ったことがないし、どちらかというとダサいロックとか貧乏くさいフォークとかのほうが好きでした。それでもダフト・パンクはわりとポップだし、やっぱりかっこいいと思ったのでたまたま聴いていた、という程度です。若い頃は女子らしく“Digital Love”とかが好きでした。なのでこの映画で登場する膨大な量の音楽の中で、知っていた曲は数曲でした。逆に言えば、その程度の知識でも楽しめた、ということは言えると思います。

この映画は、映画の中で1992年から2013年までという21年もの月日が経つわけですが、その中でポールの周りには色々な変化が起きて、ポールの彼女もどんどん別の女になっていって、元カノは子持ちになっていって・・・という、時の移ろいが捉えられるのは前作『グッバイ・ファーストラブ』(2010)と同じでした。私はこの「時の移ろい」が切なく描かれている映画にとても弱いので(映画に限らず「もう戻れないあの頃」がうまく描かれているものはツボです。言ってしまえば『源氏物語』、というか『あさきゆめみし』とかもそうです)、その意味ではこの映画も良かったと思います。時が移ろっていく中、ポールの流す音楽は大して変わっていかなくて、それゆえ取り残されていく・・・というのがなんとも切ないです。でもその切なさは、あまりはっきりとは描かれません。ポールがそのことに対して心情を吐露したり、誰かがポールの今の状況を客観的に説明したりということはありません。だんだん小さくなっていくイベントの規模や、クラブのオーナーに「もっと流行の音楽を」と言われる場面などからだいたいはわかるのですが、やっぱり一番はっきりわかったのは、ダフト・パンクの“Within”(2013)を、女の子Djが流す場面だと思いました。しかしそれがダフト・パンクの曲であることは説明されないので、予め知っていることが前提でした。それともフランス語だと何か説明するセリフがあったのでしょうか。少なくとも日本語字幕ではそれはありませんでした。なので、やっぱり知らなかったら理解しづらい映画かもしれない、と思いました。

ところで、この映画を一足早く観ていたという映画/音楽ジャーナリストの宇野維正氏がTwitterにて

“恥ずかし気もなく言ってしまうと、19歳でラリー・レヴァンのDJを初めて体験した(忘れもしない1990年6月東麻布ENDMAXオープニング)自分にとって「EDEN」の主人公はもう1人の「そうなっていたかもしれない」自分だし、あの映画のダフト・パンクは自分にとって小沢小山田なんですよ”

とコメントしていて、なるほどと思いました。この映画の主人公みたな経験をした人は、実はたくさんいるんだろうな、と思います。ポールのピーク時の活躍はかなりのものでしたが、そこまでいかなかったけど似たような道をたどった、という人も含めれば、かなりたくさんいるのではないでしょうか。そういう風に、主人公に自分を重ねて観る人も多いのかもしれない、と思います。ごく一握りの人を除くほとんどの人が、どこかしらで夢に踏ん切りをつけているわけですし。思えば、始めに若いポールが一人、林でカラフルな鳥を見ますが、この鳥はアニメーションで登場します。他には一切アニメーションの表現がないのでちょっとこの鳥だけ浮いているのですが、これはポールドラッグでラリったことの表現かと思いきや、もしかすると「叶わぬ夢」の比喩だったのかなー、と思ったりしました。なんか切ないです。

しかしこの映画、膨大な数の音楽が流れるので(曲目リストはこちら)、好みじゃない人にとってはかなり辛いと思います。実際、私も正直ポールが後半で流していた音楽については、そのシーンに明るくない私からすると「ただの普通のハウス」に聞こえて、あまりカッコイイと思えずちょっと辛かったです。まぁでも一曲一曲を長々聴かせるわけじゃないし、曲が流れている間もストーリーはきちんと進んでいくので、嫌いじゃなければ大丈夫だと思います。

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