第27回東京国際映画祭の感想(『ゼロ地帯の子どもたち』ほか)

今年は期間中唯一の土曜日に仕事が入ったり、日曜日は用事があったりしたため8本しか観られませんでしたが、それでも一日有休取ったり仕事後連日通ったりして、結構頑張ったと思います・・・。それぞれの感想を書きます(観た順)。(★=1、☆=0.5 最高★5)

The_Face_of_the_Ash

『遺灰の顔』/シャフワーン・イドレス/クルディスタン=イラク/2014 ★★★

イラン・イラク戦争中に起きた遺体取り違えから起きた村人たちの騒動を描いています。そもそも遺体が息子のものかどうかわからない、というのはそれだけ遺体が損傷しているからで、それだけでも戦争の悲惨さを描くことはできそうなのですが、この映画はまさかのコメディ仕立てでした。コメディの質は無声映画時代のコメディを観ているかのような古さがありましたが、逆に新鮮でした。あとは音楽を演奏したり踊ったりする場面が印象的。中東の映画はこれがあるからたまらない。監督は映画祭に来る予定だったそうですが、イラクの日本大使館が現在ビザの発行を停止しているため、イランかヨルダンに行かないとビザを発行することができず、それも難しかったため来日が叶わなかったとのこと。映画自体よりもそちらのほうがショッキングでした。監督からは代わりに手紙が届いていて、そこでは「イラク人は、世界からはテロリストとみなされ、国内ではテロの脅威に怯えている」ということが書かれていて、冷水を浴びせられたような気になりました。

 

north-by-northeasst

『北北東』/チャン・ビンジエン/中国/2014 ★★★★☆

超面白かった!文革直後の中国のカオス状態を、田舎の村で起きた連続暴行事件を題材に描いています。とにかく警察がダメダメで、それがコミカルに描かれていたので面白かったけど、実際に文革直後の中国は、警察も捜査の仕方なんて全然知らなくて、とにかく誰もが右も左もわからない状態だったそうです。あと、この監督は現代美術家でもあるそうで、それが関係あると思うのですが、田舎の四季をとらえる映像がすごく綺麗でした。なんかジョン・フォードみたいでした。それから、犯人逮捕のため警官の呼びかけによって無駄に集まった群衆がだぶつく場面で文革の士気高揚音楽が流れたりするセンスが最高でした。そして秀逸なラスト!最高!

 

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『破裂するドリアンの河の記憶』/エドモンド・ヨウ/マレーシア/2014 ★★☆

レアアースの工場建設に反対する若者たちを描く青春もの。少女と少年の淡い恋を描く前半は良かったけど、少女が去ってからは物語の主軸が抵抗運動に移って、別の映画のような印象。そして始めは平和的抵抗を主義にしていた女教師が、暴力も厭わないなどと言い始めて暴走しだしたあたりからちょっと付いていけなくなりました。何が彼女をそうさせたのかもよくわからなかったし(夫の不在が描かれているので夫が被害者とかだったのかな?)、少年が教師を崇拝して運動にのめり込むのも、少年がただのバカみたいに見えてしまって残念。ただ、Q&Aで監督とほとんどのキャストが集っていたのですが、みんなテンション高くて仲良さそうでした。良い現場だったんだろうなぁ、と思いました。特にジョーイ・レオンはめちゃくちゃ可愛くてアイドルみたいでした。

 

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『1001グラム』/ベント・ハーメル/ノルウェー=ドイツ=フランス/2014 ★★★

『破裂するドリアンの~』のカオスっぷりから一転して整然とした無機質な世界で、あまりの違いにちょっとドギマギした。無機質な生活感ゼロの部屋に住んで笑顔を見せないヒロインが、温もりのあるインテリアの部屋に住む笑顔の絶えない男と出会って変わっていく姿に結構普通にキュンと来ました。しかし「重量の定義」が題材というのは新鮮ながらエンターテイメント性がなく、「良かった」とは言えても「面白かった」とは言い難いです・・・。

 

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『実存を省みる枝の上の鳩』/ロイ・アンダーソン/スウェーデン=ノルウェー=フランス=ドイツ/2014 ★★★

これは!これはわけわかりませんよ(笑)!イメージのコラージュみたいな感じで、一貫したストーリーなど勿論ありません。この監督だし、別にそれは元々期待していたわけではありませんが、あまりにも理解不能で、もう私にはこういう映画を理解しようとしたり理解したフリをしたりする気力はありませんでした。勿論理解するばかりが重要ではありませんが、それで言えば感じるものこそ一層なかった。狂言回しとなる面白グッズ売りの二人のやり取りは良かったし、シュールな笑いは結構笑えたけど、「もういいよ、こういうのは・・・」とばかり思ってしまった。タイトルの由来となったであろう子供の発表会の場面など、印象に残る場面はいくつかあるのですが。これがベネチア金獅子かぁ、ベネチアの金獅子とは結構相性が良かったのですが・・・。

 

BOREG

『セルフ・メイド』/シーラ・ゲフェン/イスラエル/2014 ★★★☆

イスラエルとパレスチナの女性が入れ替わる話、というあらすじを読んで、ちょっと幻想的な味付けがあろうとも基本は社会的な映画だと踏んでいたのですが、予想をはるかに上回る幻想っぷりでした。これは完全にアート系の映画です。イスラエル人側のほうは現代美術家という設定で、住んでいる家などやたらスタイリッシュ。パレスチナ側は倒壊した家がそのまま残っているような路地が映し出されたりしてそれらしかったけど、家の中は薄青い色の壁などで、着ているものと統一されていたりしてやっぱりちょっとファンタジックでした。そのわりにパレスチナ人がイスラエルに入るときの検問所などは幻想的な要素が全然なくて、それらのバランスが絶妙。監督はパレスチナ問題についてどうにかしなければならない、という思いで、検問所を見張るなどの色々な活動をしているそうです。意味不明ながら、なんか良かった、なんか面白かったと思える映画でした。ディズニー映画『魔法使いの弟子』ネタも効いていて良かった。

 

borderless

『ゼロ地帯の子どもたち』(公開タイトル『ボーダレス ぼくの船の国境線』/アミールフセイン・アシュガリ/イラン/2014 ★★★★★

最高!今年映画祭で観た中で一番良かったです。イランの映画はどうしてこうも豊潤なのでしょうか。特に子供を撮らせたら無敵じゃないですか。かなり期待してたけど、それをもはるかに上回る良さでした。はじめのほうは、(恐らく)孤児の少年がイラクとの国境の河に打ち捨てられた廃船を隠れ家にたくましく生きる姿を、セリフなしの長回しで、少年が生きるために走り回る様子を克明に捉えますが、その緊迫感といったらありません。それだけなのにぐいぐい引き込まれて、飲み物を飲む暇さえありませんでした。闖入者が現れてからの山場では少し語らせすぎな感も無くはないですが、とにかく心震える内容で、涙が出ました。アジアの未来作品賞を受賞したとのことで、良かった!嬉しいです。一般公開されて欲しいです。

 

merbourne

『メルボルン』/ニマ・ジャウィディ/イラン/2014 ★★★★

ポスト・ファルハディと聞いて、確かに納得でした。「その時何が起きたのか」が徐々に明らかになって、それにつれでどんどん変わっていく人間の心理が描かれた脚本が巧みです。面白いし、人間ってこういうものだ、という説得力があります。しかし確かにこれは完全にポスト・ファルハディで、もう少し違うものも観たかったです。あと、人間の心理を深くえぐっている作品だと思うのですが、そのわりには印象がなんとなくさらっとしていました。夫婦の他、もう一人別の視点があったらもっと面白かったかもしれません。でも十分面白かったですが。

評判の良かった『わかってもらえない』『シーズ・ファニー・ザット・ウェイ『昔のはじまり』なども観たかったし、賞にからんだものは『ゼロ地帯の子どもたち』しか観られませんでしたが、それでも素晴らしい作品に出会えました。映画祭は、通常公開されないような世界の映画を観ることができて(それも大スクリーンで!)、且つ多くの場合上映後にQ&Aがあるので映画についてより深く知ることができて、しかもわりと簡単に監督や俳優さんにサインをもらえたりもするのが醍醐味だと思います。来年も楽しみ!あ、その前にフィルメックスですね。楽しみ!

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