『FORMA』:面白い!凄い!怖い!面白い!!

forma

2014.9.27 オーディトリウム渋谷

『FORMA』/坂本あゆみ/日本/2013 ★★★★★
女の本質を正確に突いた、不穏な「覗き見」映画。且つ会話と構造で見せる極上のサスペンス映画!

これは凄い!長回しの会話劇でありながらもサスペンスフルで、先が知りたくて仕方がなくさせられる構造が素晴らしい。脚本凄い!

【あらすじ】
会社員の綾子(梅野渚)は父(光石研)と二人暮らし。ある日の残業帰り、交通整理のアルバイトをする旧友・由香里(松岡恵望子)に偶然再会します。会社で主任の地位についている綾子は、定職に就いていない由香里に自分の会社で働かないかと持ちかけ、部下として迎え入れます。しかし綾子は由香里に嫌がらせをするようになり・・・。

【感想・ネタバレあり】
本来一つであるはずのシークェンスをバラバラにして絶妙に配置することで、145分全く飽きさせないサスペンスフルな作品になっています。前半で伏線が張られ、後半で前半に語られなかった事実が少しずつ放出されるので、後半は「なるほどね!」の嵐。特にラスト24分間の長回しシーンは、ストーリー上もテーマ上もこの映画の核となる場面でまさに白眉。このスリルは何事でしょうか。もっとエンターテイメント性の低い映画だと思ったのに、ガッツリ楽しめました。ちょっとファルハディっぽさも感じました。

俳優陣の演技が、あまり“リアル”という表現は使いたくないのですが、でもまさにリアルな演技です。特に綾子、喋り方からセリフ、動きまで、「あーこういう奴いるわ」と思わせられます。しかし他も、由香里はもちろん、男性陣もみんな素晴らしいです。由香里の婚約者役の仁志原了は、脚本家(この映画のほか『麦子さんと』『ばしゃ馬さんとビッグマウス』等)なのに演技も凄いのですね!初めて知りました。

前半は綾子が不気味なくらい嫌な奴で、主役なのにこんなに嫌な奴なの(笑)!?と思ったのですが、ちゃんと観ていくと由香里とのダブル主演でした。二人のやりとりは、一見平穏な場面ですら常に緊張感が漂っていて、いつ爆発するのかハラハラします。綾子のいちいち嫌らしい言動、それにおとなしく耐えているかのような由香里、しかしこのままのはずはない。不穏な予感が満載です。特に説明はないのに、日常の会話やちょっとした場面からジリジリとそれが炙り出されます。
そして後半になると、過去に何があったのかが次第に明らかになってくるので、綾子が単なる嫌な奴ではないことがわかってきます。この「何があったのか」を巡っては、『藪の中』式の手法が取られてはいますが、まぁでも二人の間での話なのでそれほどテーマとして重きを置いて扱われているわけではないと思います。
それよりも、その二人が自分の言い分をはっきりと口にして対峙する24分間の場面における、「これが女だ」とでも言いたげな演出の迫力といったらありません。言い合いから殴り合いへとなだれ込むまでが1カットで表現されているのですが、ここで決定的に表出する事の真相と女の醜さが本当に痛々しいです。一度男(父親もはっきりと男。)のことで憎しみを持った相手には一切事情説明の余地を残さない、残す気もない、幸せになるなんて許さない。とにかく相手がどれだけ最低な女なのかをみんな(特に男)に知らしめたい。憎まれたほうも、まさに劇中の由香里のセリフにあるように「自分が不幸だからって私のせいにしないで!」、「妬んでんじゃねーぞゴルァ!」(これはセリフにはない)。本当に醜いのですが、しかしきっと25歳以上の女性ならだいたい過去の記憶からどちらの立場も身につまされるのではないでしょうか。というか、まだ分別のつかない中学・高校の女子たちは、いつの時代もだいたいこんな内容の悪口大会を繰り広げているのでは。大人になっても本質はそのままで、大人であるがゆえに顕在化しないだけなのかもしれません。この辺はやはり女性監督だからこそ出せた迫力だと思います。

そんな女の本質とともに、本作のテーマとなっているのが「覗き見」です。冒頭、オフィスで一人残業する綾子が、ふいに側にあった段ボールにペンで小さな穴をあけて頭からかぶり、その穴から外を覗き見ながらオフィス内を歩きます。ここで既にこの映画が「覗き見」の映画であることが示されています。しかもこの場面、オフィスの窓ガラスの外から撮られていました。覗き見をする綾子を外からカメラが覗き見ている構図です。カメラはその後も基本的に対象を遠くから眺めるような位置に固定されていて、人物のアップなどもほとんどありません。まるで女子二人のいざこざを盗撮しているような感じです。そして事件が起こる24分間の映像はまさに盗撮。この映像を観るとき観客は、FORMAという映画を観ている状態から、その映画の中で登場人物が見る映像を観る状態に変わります。映画の中に入ったような感覚になるわけです。覗き見ていたのは私だったのか、という気になります。

この映画はそういう映画なんだと思います。綾子と由香里という二人の女の諍いを盗撮のような視線で冷徹にとらえながら、でもこれは誰の物語でもある、と言われているような気がしました。恐ろしいです。この監督、良い意味で底意地が悪いです。インテリジェンスを持ち合わせたが故の底意地の悪さです。しかし、物を創り出す女性は底意地が悪くないと!と、個人的には思います。時々言われるような、「女性ならではのほっこり温かい視線」なんて存在しないと、私は思うのです。

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