『ヘウォンの恋愛日記』『ソニはご機嫌ななめ』:真逆のタイプのヒロインと、周りの男たち(と酒)

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2014.8.25 シネマート新宿

『ヘウォンの恋愛日記』/ホン・サンス/韓国/2013 ★★★★★
『ソニはご機嫌ななめ』/ホン・サンス/韓国/2013 ★★★★★

相変わらずのホン・サンス節が炸裂した最高の2本でした(しかもシネマートデーに各1000円で観てやった)!普通の人の普通の日常を切り取ったような会話劇で、大きな話の盛り上がりもなく、スーッと始まってスーッと終わっていきます。一応男女の(ダメダメな)恋愛が主軸なのもいつも通り。他の誰にも測れないようなタイミングでの謎のズームインもいつも通り。そして登場人物がみんな酒を飲みまくり、全体的にコミカルなのも(特にソニ)いつも通りです。

ヘウォン~は、女優を目指す女子大生ヘウォンが大学教授兼映画監督の妻子持ちの男と不倫していて、その関係がグダグダ続く話。ソニ~は、映画関係の大学を卒業したソニが大学時代の先輩の男二人+教授兼監督一人と軽いタッチで浮気し、それに翻弄される男たちを描いた恋愛喜劇。前者のほうがやや暗く、後者は明るいです。

ヘウォンとソニは対照的な女の子で、ヘウォンがちょっと陰のあるクールな美女タイプなのに対し、ソニは愛嬌があって「なんか放っておけない」といった妹キャラ?です。ヘウォンは不器用なさびしがり屋で、ソニは器用な非さびしがり屋です。着ている服を見てもそれがなんとなく伝わってきます。ヘウォンのファッションは、よく作風が似ていると言われるエリック・ロメール作品に出てくる女の子みたいな感じで、すごいテキトーなんだけどなんかサマになってるような感じです。たぶん扮したチョン・ウンチェのスタイルの良さとかもあるんでしょうが、でも赤の使い方がうまいというか。たぶん、女優を目指してるだけあって「今風」は嫌なんじゃないでしょうか。対するソニは、わりと今っぽい感じで、でもテキトーで、つまりテキトーです。バーゲンの時にパルコで全部買いましたみたいな感じです。でもかわいいです。あ、今気付きましたが二人ともスカートは履いてませんでした。自立したい女性の心の現れなんでしょうか。

ところで、ホン・サンス映画の白眉は、私は飲み会の場面だと思っています。韓国人って本当にこんなに酒を飲むのですか?でも韓国に留学していた友だちはお酒強くなって帰ってきたし、何人かいる韓国人の知り合いもみんな酒豪。ってことは、みんなしょっちゅうあんなふうに飲みまくって、毎回あんなふうに管巻いてるんでしょうか。しかもホン・サンス映画を見る限り、女子なのに泥酔して吐きまくったりして、これが日本だと翌日そのメンバーと顔を合わせようものなら「昨日は大変な醜態をお見せしまして・・・ほんともう消えたいです・・・」とかなんとか言って実際消えたい気分なのが標準だと思いますが、韓国女性は全くそんな気分とは無縁なのか、翌日その場に居合わせた男に「あなた私が泥酔したのを良い事に昨日私に変な事してないでしょうね!?」と来ます(『よく知りもしないくせに』)。これは凄い。私はこんなところで文化の違いを感じてしまいます。もっと高尚なところで感じたかった。でもそこよりもホン・サンス映画の飲み会場面で面白いのは、みんなが酔っぱらって管を巻いて、そして誰かが(秘密をバラしてしまうなどの)失言→シーン・・・みたいな、思わず「あるわ・・・」と言いたくなるような、誰もが身につまされるような流れがたくさん出てきて、それが本当に自然な長回しの会話なのに、ダレることなくコミカルに突き抜けるところです。自然に見えるけれども、一つ一つのセリフは相当綿密に計算されたものなんじゃないかと思います。そして今回の二作についても、ヒロインと相手の男たちを筆頭に、登場人物はみんな本当によくしゃべります。しかも同僚や友達は言わずもがな、目上の人にでもズケズケと持論を展開する様子は、今の日本ではあまり見られない光景だと思います。実際の知り合いなどを見ても、韓国の人は日本人に比べてはっきり主張する傾向があるような気がします。私はこんなところでも文化の違いを感じます(さっきよりは少しレベルが上がった気がします)。

あと、韓国のビッグな監督というと他にもキム・ギドクとかポン・ジュノとか色々いますが、彼らと比べて、ホン・サンスの映画は断然「画作りがテキトー」に見えるのが凄いと思います。キム・ギドクもポン・ジュノも、完璧に計算しつくして徹底的にこだわったロケーション(またはセット)と構図と色で独特の世界観を醸し出していると思うのですが、ホン・サンスの映画にはそれが全然ないように見えます。簡単に言うと、キム・ギドクやポン・ジュノが韓国を舞台に撮った映画を観ると「韓国、行ってみたいな」と思うのですが、ホン・サンスの映画を見てもそうは思えないんです(いい意味です!)。今回の二作にも一応お城とか、そういう歴史的建築物みたいなものは出てくるのですが、他は中途半端にうらぶれたラブホテルとか、半分工事中の道路とか、全然アートの要素がない場所で撮っているように思えます。過去作に例外は多少あれど、基本は「どこにでもある風景」を舞台にしています。「どこにでもある風景」という名の「どこにでもあるわけじゃない風景」は世の中に氾濫していますが、ホン・サンスの映画ではそれは正真正銘どこにでもある風景に思えます。でも、そこも緻密に計算されているんだろうなぁ、と思います。先述の衣装といいセリフといい、全てにそのスタンスが貫かれているような気がします。あの謎のズームなんかも最高にコミカルで、気取ってみれば「テキトーという名の緻密さ」とでも名付けたいです。(ところで「○○という名の××」っていう言い回しは何が大元なんだろう?)

ところで、このように誰にも真似できないような作風を既に確立しているホン・サンスについて、映画評論家の森直人氏が「これからホン・サンスは、これまでと同じような、似たような恋愛模様を繰り返し繰り返し撮る作家になるのではないか。そしておのれのスタイルをとことん追究していくのではないか。それはそのキャリア後期の小津安二郎のようである。」というようなことを言っています。確かにそうなのかもしれません。小津映画もあの独特の切り返しやセリフの反復などの「小津節」が、娘の嫁入りという毎度のテーマで撮るようになってから特に研ぎ澄まされていったような気がしますが、ホン・サンスもそうなると思うとかなりしっくりきます。

今ベネチア国際映画祭が絶賛開催中ですが、そこに我が愛・加瀬亮主演のホン・サンス監督作品が出品されていて、日本公開は12月とのことです。楽しみすぎます。2014年公開ベスト映画にホン・サンス映画が3本も入ることになるかもしれません。

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