『パークランド―ケネディ暗殺、真実の4日間』:顧みられなかったほうの物語

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2014.7.5 ヒューマントラストシネマ有楽町

『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』/ピーター・ランデズマン/アメリカ/2013 ★★★★

良かった。最近何かとあざとさが透けて見えるような映画(とくに日本映画・・・)を多く観ていたせいもあってか、久々に真面目に作られた良作を観た気がしました。監督のピーター・ランデズマンはジャーナリストで本作が初監督作とのことですが、それが信じられないぐらい上手くできた映画だと思います。ドキュメンタリー風のカメラも抑制がきいていて効果的だし、音楽で煽るようなこともありません。そして何より、「事件の真相を明らかにする」のではなく、起こったことを、関わった色々な人々のそれぞれの視点から見せることで一つの事件を浮かび上がらせて、そこにある人間のドラマを描く、という語り口が良いです。

この映画は、1963年11月22日に起きたケネディ大統領暗殺事件と、事件に巻き込まれた人々をドキュメント風に描いた作品です。シークレットサービスやFBIといったいかにも巻き込まれるであろう人々だけでなく、当日たまたまカメラで現場を撮影してしまった洋服屋のカメラファン(エイブラハム・ザプルーダーという人で、この人の撮った8ミリフィルムの映像は最も事件を克明にとらえているとして有名)、銃撃犯とされるリー・ハーヴェイ・オズワルドの家族、大統領が運び込まれてきた病院のスタッフなど、まったくの市井の人々も描かれています。それらが交差する鮮やかなカットさばき(?)によって、パレードの熱狂から事件後の混乱が臨場感をもって伝わってきます。シークレトサービスやFBIのやり取りは、豆知識が増えるような、「へぇ~」というところも多くありますが、しかし、この映画の主人公はそれら「こんなことも起きていたんです」という小ネタでもなければケネディその人でもなく、はたまた歴史的暗殺犯でもありません。この映画の主人公は、たまたま事件の側に立つことになってしまった、ごく普通の、一般の人々でした。

その代表である、偶然に事件を撮影してしまったザプルーダーの「なんてことだ!」という悲痛な叫びや、「こんなものを撮るんじゃなかった」という言葉も印象的ですが、私にとって特に心に残ったのは、やはり銃撃犯オズワルドの家族です。

誇大妄想狂の母と弟に挟まれて、ただ一人まともな市民の兄ロバート(父は弟が生まれる前に亡くなっているらしい)は、弟の行動が理解できず、当惑します。事件後ずっと言葉の少なかったロバートが、収監された弟との面会で弟の妻子のこれからのことに触れたとき、ついに怒り叫ぶのですが、その場面はそれまでの冷静さとのコントラストが効いて、とても印象に残ります。しかもその場面では、それでも一緒に育ってきた弟に対する家族としての愛情は捨てきれていないこともわかるので尚更胸打たれます。

それから、ケネディの葬儀と、移送中に撃たれたオズワルドの葬儀がほぼ同時に行われるのですが、その対比もうまく描かれています。ラジオで生中継され、大勢の人が参列しているケネディの葬儀と、神父もなかなか見つからず、埋葬する墓も見つからず、棺を運んでくれる人もいないオズワルドの葬儀。ロバートの怒るでもなく悲しむでもない淡々とした表情が、むしろ心の底の深い悲しみをあらわしているようで、なんとも切なかったです。特に、棺を運んでくれる人がいなくて、パラパラと集まっていた報道陣に「手伝ってくれないか」と頼む場面は観ていられないぐらいでした。このロバートを演じたのはジェームズ・バッジ・デールという人で、ロバート・ゼメキスの『フライト』に印象的な入院患者役で出ていました。あとは『アイアンマン3』とか『ワールドウォーZ』とか、わりと派手な大作ものに出ているようです。この2作は観ていないのでどのくらい印象的な出演をしているかわかりませんが、とにかく一つ言えるのは、それらに比べて小規模ではあっても、この真面目な良作の主役はほどんどジェームズ・バッジ・デールのロバートであるということです。

対比ということでいえば、映画のタイトルにもなっている「パークランド」は、ケネディとオズワルドが運ばれた病院の名前だそうです。ケネディが運ばれてきたとき、この病院のスタッフはなんとか救おうとみんなで懸命な処置を施します。彼らはオズワルドのときにももちろんプロとしての仕事はこなしていますが、シークレットサービスのダラス支局長が「死なせるな!」と言ったとき、「なぜ?」という声が自然に上がったりします(こういう「なぜ?」は非常に危険だと個人的には思っていますが)。

それにしても、ケネディって本当に凄い人だったんだなぁ、と思います。この事件の大きさも、きっと私がまだ見たことのない大きさなのだと思います。映画を見終わって、この事件やケネディという人について色々調べたくなりました。良い映画はその扱っている題材についてもっと知りたいと思わせてくれます。本当、良い映画でした。ラストでまた心が泣きました。ロバート・オズワルドという人の人生をもっと見てみたい。

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