『渇き。』:相変わらずガチャガチャしてるけど

kawaki

2014.6.29 新宿ピカデリー

『渇き。』/中島哲也/日本/2014 ★★★★

面白かった!中島哲也の映画で初めて面白いと思いました。この監督の映画は『嫌われ松子の一生』と『告白』しか観ていないのであんまり色々言えませんが、少なくともその二本については、ひたすら派手でガチャガチャとうるさいのと、登場人物がやたら「現代的な」「心の闇を抱えている」タイプばかりで、その設定にも食傷気味だし異常すぎてリアルさもなく感情移入できないのとで苦手でした。が、これは面白かった。相変わらずガチャガチャとうるさいし、登場人物は全員「心に闇を抱えている」のですが、でも、全体の中でもとりわけガチャガチャしている場面ではその必要があったと思えたし、人物描写も、最後の最も重要な人物には感情移入できたので、入って行きやすかったのだと思います。あとは何と言っても役所広司の演技の素晴らしさ!

主人公である藤島昭和(ショウワではなくアキカズ)(役所広司)は刑事でしたが、妻桐子(黒沢あすか)の不倫相手に暴力をふるったことがきっかけで辞職し、現在は警備会社で働いていますがヤク浸け、酒浸けのろくでなしです。桐子との間には加奈子(小松菜奈)という一人娘がいますが別居しているため娘にも会っていないし、妻にも会っていません。しかしそんなある日、昭和の携帯に桐子から電話が。加奈子が行方不明だというのです。昭和は取り憑かれたように娘を捜しはじめますが、娘の同級生たちに話を聞いていくうちに、容姿端麗で優等生であるはずの娘がどんな人間だったか、どんな人間と関わっていたかを、徐々に知っていきます。「愛する娘は、バケモノでした。」がこの映画のキャッチコピーです。以下、ネタバレあります。

この映画は、加奈子を捜す昭和の動きと、その3年前、加奈子の高校で何が起きていたかを、いじめられっ子だった男子“ボク”(映画の中では名前が出てきません)の目線で捉える映像とが同時に進行する構造になっています。昭和が加奈子の同級生たちに聞いた話が、“ボク”の目線の場面で映像化されるような構造です。そして、サスペンスとしては、「加奈子の本当の姿って?」と、「殺人犯は誰?」そして「加奈子はどこにいるの?」の三つの謎で引っ張っていくので、それなりに引き込まれます。加えていつもの展開の速さ、そして何より小松菜奈ちゃんの超絶な美しさ。とりあえず映画に見入ることになります。

“ボク”はいじめられっ子でしたが、加奈子の差し金によりいじめられなくなります。そのことから加奈子に魅かれていくので、このあたりの映像は光がすごく綺麗です。全体にうっすら青みがかった、淡い色彩の中での空と水と小松菜奈ちゃんが本当にキラキラしています。ある日“ボク”は加奈子にパーティーに誘われ、「い、行ってみようかな・・・」と言って絶対向いてないにも関わらずのこのこと行ってしまうのですが、そのパーティー場面は、それまでの淡い映像とは対照的です。でんぱ組.incの音楽がけたたましく流れ、カラフルな服装とメイクをした、加奈子をはじめとする10代の若者たちがラリッて踊り狂う様子が、カラフルな照明の明滅とともに物凄いカットの速さで描かれます。ここはほんっとにガチャガチャしていてうるさいです。でもここはこれで良いと思ったし、見応えもありました。『告白』のCGによる過剰演出にはちょっとひいてしまいましたが、これはちゃんと必然性があるし、半分ギャグみたいな感じもあるので合っていたと思います。この場面以外でも、アニメーションが入ってきたり音楽がどんどん入れ替わったりとめまぐるしさはありますが、この(他の作品では苦手に感じた)中島哲也っぽさが、不思議と今回は「上手いなぁ!」と感じました。

あとはとにかく役所広司の、今まで観た中でも一番凄いかもしれない演技(狂気、滑稽さ、怖さ、弱さ、悲しさが共存!)とか、小松菜奈ちゃんの、セリフは棒読みながらも美しさゆえのハマりっぷりとか(妖精だね!)、オダギリジョーのスーツ+スニーカーという「教師ファッション」とか(“ボク”の死の場面を考えると絶対必要なんだろうけど滑稽すぎて似合ってた)、妻夫木君のチュッパチャップスとか(こいつもサイコパス?)、二階堂ふみの醜さとか(茶髪似合わなさすぎ)、松永のお母さんとか(そりゃ育ち悪いよ)、スーパーの屋上のアナウンスの絶妙さとか(うまい!)、大きなところから細かいところまで見応えありました。二階堂ふみ、ほんと醜かったなぁ・・・。でも二階堂ふみが演じた遠藤はやたら不良だけど普通の子で、加奈子みたいな芯から悪い子にあこがれてる感じが出ていて良かったです。中高時代って、ちょっと悪い子がイケてるように見えたりすることもあったし、懐かしかった。

しかしやっぱり難点もいくつか。まず、(中島作品はいつもそうですが)登場人物や設定にリアリティがありません。漫画っぽいです。成績優秀のはずの加奈子がなぜあんな悪そうな奴らがゴロゴロいる高校に進学してるのかが気になるし(追記:と思ったら高校の同級生は橋本愛達だけでした、それならまぁわかるか)、あの凄惨ないじめもちょっと激しすぎてひいてしまいます。あと、加奈子はカリスマ的悪魔なので、何を考えているかとか、加奈子のバックグラウンドとかは出す必要がないのかもしれませんが、もう少し加奈子の内面が、一瞬の表情だけとかでもいいから見たかった。特に父との対峙の場面は、原作読んでないと何が起きたかを正確に把握するのは難しかったので。あそこがサイコパスの誕生を決定的にした場面なんじゃないかと思うのですが。まぁ実は加奈子は“ボク”相手にわりと自分語りしてましたが、あれは詩的な自分に酔ってる感じがしてちょっとアレでした。実際酔ってたのかもしれないけど。なんかそこは『私の男』と同じだったかも。あとこれは私の読解力の問題かもしれませんが、加奈子が唯一愛していた中学時代の元彼・尾形と“ボク”がかぶって、尾形なのか“ボク”なのかちょっと混乱しました。

でもラストの美しさで帳消しです。雪の中の中谷美紀と役所広司、二人とも悲しすぎて・・・。「ぶっ殺してやる!」は、「葬ってやる」とか「抱きしめてやる」の意味なんだろうなぁ。

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