『スイートプールサイド』:毛に始まって毛で締める

sweetpoolside

2014.6.15 新宿ピカデリー

スイートプールサイド』/松居大悟/日本/2014 ★★★★

「青春剃毛映画!」というキャッチコピーに、なぜか「絶対に観なくてはならない」という使命感にかられて鑑賞。めちゃくちゃ笑えた、面白かった!

原作は押見修造の漫画というこの作品、女の子が男の子にムダ毛を剃ってもらうという、シンプルな映画です。主人公の太田年彦は高校生なのにまだ身体に毛なし、逆に同じ水泳部の女子・後藤綾子は女子なのに剛毛。どちらも本気で悩んでいます。ある日、ツルツルの太田を見た友人が、悪ふざけで裸の太田を部員みんなの前に引っ張り出します。後藤綾子は太田のツルツルの局部を嫉妬の眼差しで見つめ、「なんでそんなにツルツルしてるの?秘訣があるんでしょ?教えてよ!」と詰め寄り、なぜか「じゃあ太田君が私の毛を剃って」と言いだします。そして二人は川辺でひっそりと、しめやかにそれを実行することに。太田の剃毛術に感動した綾子は涙を流して感謝します。しかし毛は伸びるものなので、それ一回では終わりません。毎週月曜日の放課後は「毛剃りタイム」となり、二人の蜜月がスタート。太田は(妄想とともに)綾子にどんどん魅かれていきます。

高校生が主人公なので、学園ものともいえる本作ですが、まず思春期特有の悲喜こもごもをすべて「毛」に収斂させたところが良いです。水泳部というどうにでも料理できそうな舞台が用意されているにもかかわらず、そこで描かれるのは、大会選抜に選ばれるかどうかのスリルでもなく、ライバルとのタイムの競い合いでもなく、はたまた女子のお尻を眺めて喜ぶ男子たちでもなく、ただひたすら「毛」に悩む二人の男女です。それは例えば『桐島、部活やめるってよ』のように10代の「社会」を桐島というマクガフィンを中心に重層的に描きだすでもなく、『たまこラブストーリー』のように初恋と将来と「大人になること」「変わっていくこと」をズバッとひたすらキラキラ描くのでもありません。ここにあるのは、毛について真逆の悩みを持ち、奇妙な共犯関係とでも呼ぶべき男女の、微妙にベクトルがかみ合わない恋です。そしてその中心にあるのは常に「毛」。毛に始まり、毛に終わります。途中太田が壊れ出して結構なドラマ(一人で盛り上がってただけ)になったりもしますが、最後は毛で終わるのです。これは良いです。

でも全体を通して印象に残ったのは、やっぱり二人が川辺に座り込んで毛を剃るシーン。川の水がキラキラ美しく、剃られていく毛もキラキラ美しく・・・。何せ(剛毛の)美少女の腕や足を触っているわけなので、太田は毛を剃っている最中に色々な妄想をするのですが、腕を大地に見たてて「あたたかい・・・」と言ったり、毛を森林に見たてて木を伐採したりするのが非常に笑えて良かったです。ちなみに毛を剃るときのジョリィ・・・という音がリアルなのですが、これは音響効果の岡瀬晶彦さんが本当に自分の毛を剃って、その音を使ったらしいです。しかもリアルさを出すために、腕を剃るシーンの音は腕を、脇を剃るシーンの音は脇を本当に剃った音を使ったらしいです。このこだわり・・・!

あとは、周りの登場人物もキャラが立っていて良かったです。水泳部のコーチで大学生の、落合モトキ演じる二ノ宮先輩、松田翔平演じる飄々とした兄や、荒井萌演じる太田のことが好きな女子・坂下(いるいる系)など、主役二人とはそれぞれ正反対なタイプなので、映画全体が引き締まっていました。特に二ノ宮先輩は良かったです。最初はただのイケメンコーチかと思ったのでいけすかなかったのですが、途中から「声が裏返る」というコンプレックスを持っていることが発覚し、断然愛すべきキャラとなりました。「一見イケてる奴も、実は情けない」っていうのは青春映画の鉄板かもしれません。

しかし太田を演じた須賀健太、綾子を演じた刈谷友衣子、ともに上手いですね。特に刈谷友衣子ちゃん、めちゃくちゃ可愛いのに、特殊メイクの毛を装着して脇の毛まで剃ってもらう役をこんなにも爽やかに好演するなんて凄い!

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