プリズナーズ

prisoners

2014.5.4 新宿ピカデリー

『プリズナーズ』ドゥニ・ヴィルヌーヴ/アメリカ/2013 ★★★★☆

こういう「ザ・サスペンス」な映画は久々に観た気がしますが、二転三転するストーリーやアメリカ郊外の陰鬱な雰囲気、人間のやり取りに漲る緊張感が上手くできていて最高に楽しめました。「後ろに誰かいる!」「その箱を開けるとグロい死体が!?」などの思わせぶりな演出はベタなのですが予測できないので心拍数上がりっぱなし。登場人物もキャラが立っていて良いし、全員が正気を失って、罪人と非罪人の垣根の存在を揺るがすような構造は奥深く、考えさせられました。小さな女の子二人が誘拐されて、必死で探す家族と刑事、そして容疑者たちが織りなす物語という一見よくあるストーリーですが、なかなか非凡な面白さでした。

誘拐される少女のうちの一人の父親、ケラー(ヒュー・ジャックマン)の行動がこの映画のキーとなります。
娘が行方不明になってすぐに容疑者が逮捕されますが、証拠が見つからず、すぐに釈放されます。アレックスという名のその容疑者は知的障害者で、証拠を全く残さずに犯行することは不可能ということで、警察もシロだと判断します。しかしケラーはそれが信じられず、アレックスが犯人だと決めてしまいます。それにはケラーなりの根拠があるので、映画を観ているこちら側も、警察が正しいのかケラーが正しいのかわからなくなります。でもケラーは冷静さを完全に欠いていて、警察の話も全く聞かず、「それはちょっと違うんじゃ」というぐらい理不尽な言い方で警察を責めたりするので、私は若干警察寄りの気持ちで観ていました。この鬼気迫る父親をヒュー・ジャックマンが迫力満点に演じます。そしてなんとケラーはアレックスを私的に監禁し、娘の居場所を吐かせようとします(ここまでは予告編に出てくるのでネタバレではないはず)。ここからが、事件を担当したタトゥーだらけの型破りな刑事ロキ(ジェイク・ギレンホール)との攻防戦になります。被害者の父ケラーと刑事ロキは、犯人を探したいという同じ目的を持っているはずなのに、ロキがアレックスを釈放したことでケラーがロキを全く信用しなくなっため、最悪の仲になってしまいます。よって映画はケラーとロキの、同じ目的のための別々の動きを追うことになります。

そこからの展開は実にサスペンスフルで、謎解き、迷路、ヘビなどのモチーフが活きて、陰鬱さと不気味さと緊張感がすごいし、画的にも楽しませてくれます。また、はっきりとは説明されなくてもその人物の背景がわかるような演出があるところも良かったです。ケラーの父親への気持ちや、ロキのタトゥーの意味、容疑者の過去など、バックグラウンドがきちんと伝わるようにできています。そしてさらに、それら登場人物の、たとえばケラーの常軌を逸した行動は勿論ですが、ラスト近くの妻のセリフ、またもう一人の誘拐された女の子の家族がつぶやくセリフなど、細かい動作によって人間の恐ろしさをさらっと表している点も秀逸です。それらの積み重ねで、この作品の神髄がだんだんわかってきます。『プリズナーズ』というタイトルの意味もわかってきます。この映画は、ストーリー上では、誘拐事件の真犯人ははっきりしますが、観終わった後の後味は良くありません。「こいつが悪人だ!犯人がわかって良かった!チャンチャン!」という感じでは終われないのです。それがなぜかというと、この映画が、誘拐事件というサスペンスフルな題材を使って、人間が極限まで追い詰められたときどうなるのか、そんな場合に善人と悪人の境目はどうなるのか、ということを描いた映画だからだと思います。善と悪の二項対立にならない映画が私は好きです。エンターテイメント性と両立しているとなお素晴らしいと思います。なのでこの映画はかなり良かった。

ちなみにこの映画、パンフレットも情報量が多くて良いです。脇役から撮影、編集、音楽担当者のコメントまでしっかり載ってます。

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