『そこのみにて光輝く』:ATG映画みたいな映画

sokonominite

2014.4.26 テアトル新宿

『そこのみにて光輝く』/呉美保/日本/2014 ★★★★

綾野剛!綾野剛は前からカッコイイとは思ってましたが、カーネーションの周防さんを観て「カッコイイ!」というより「好き…」に近い感情を抱くようになってしまい、その後、出演作全てを観たというわけではありませんがいくつか観て、やっぱり良いなぁと思い続けていました。

で、この『そこのみにて光輝く』は評判もすこぶる良く、函館が舞台という設定にも魅かれたので早速観てきました。早速といっても封切一週間後でしたが、テアトル新宿はほぼ満席、女性のひとり客もちらほら見られたのは綾野GO効果でしょうか。

函館という地方都市の外れのほうで、ほとんど最底辺に近い暮らしをしている拓児と千夏の姉弟と、山での仕事で部下を死なせてしまったトラウマから逃れられずに毎日を自暴自棄に過ごしている達夫が出会うことから物語が始まります。初めて拓児の家を訪れたときに達夫と千夏が出会い、二人は魅かれあって、愛し合うようになります。

綾野剛演じる達夫は、「過去のトラウマから逃れられない男」ということで、影のある人物です。役作りのために、撮影期間中は(監督とプロデューサーに許可をもらって)ウィスキー浸りになってたらしいです。函館の地元の人達とも店で知り合って、その人たちが三週間毎日飲み仲間になってくれたとか。キネ旬4月上旬号で綾野剛の特集が組まれていて、それを読むと、綾野剛って熱い男なんだ、ということが伝わってきます(池脇千鶴も言ってます)。とにかく映画を良いものにしたい!という熱い思いを持っていて、現場でもどんどん自分からアイデアを出したりするらしいです。インタビューの受け答えも真面目な、真摯な感じで好印象です。綾野剛!イイネ!で、こういう「傷ついた男」の心を(自分だけに)開かせて笑顔を取り戻させてやりたい!というのは世の女たちの誰しもが持っている根本的な願望だと思うのですが、この映画はそれを叶えてくれる構造も持っています。その意味で、やっぱりこれは正しく恋愛映画で、綾野剛胸キュン映画でもあると思います。これは別にこの映画のことをアイドル映画だと言っているわけでは勿論なく、恋愛映画っていうのは、古今東西、主演男優に女性客が胸キュンしなければ失敗だと思うので、そういう意味でのことす。そこについて、この映画は当然成功しています。だって、あの繊細な顔の男が、もうこらえきれないといった感じで、「好きだ!」が爆発するような感じで、自分のところに走って来たら、胸キュンせずにいられますか。いられません。

拓児は、見た目は完全に田舎のヤンキーです。達夫との出会いもパチンコ店だし、声がでかくてうるさくて教養ゼロで、でも同時に人懐こかったり植物の世話が好きだったりする愛されキャラな要素を併せもった人物で、それを菅田将暉が見事に演じています。上手いです。すごく人物がちゃんと肉付けされた、生きた人物になってます。特に達夫に対して駄々をこねて「達夫達夫達夫ー!」と言いながら乗っている自転車をガンガンとジャンプさせる場面なんか、アドリブなのかどうかわかりませんが笑ってしまうぐらい「拓児」でした。

そして池脇千鶴演じる千夏。千夏はファッションなんかもいかにも田舎の水商売と言った感じで野暮ったいし、結構肉づきがよくて、スタイル抜群という感じではありません。でもそれが妙に色気があって、且つ不潔さが全然無くて、池脇千鶴じゃないと出来ないんだろうなぁ、という感じでした。あと芯が強い感じも、他の女優だとなかなか出なかったかもしれません。もっとひたすらか弱い感じになってしまったり、逆に開き直ったような感じになってしまったりしそうです。達夫とのことでいえば、最初にアプローチしていくのは達夫のほうですが、千夏のほうもどんどん好きになっていってるんだなぁ、というのがわかるのが良いです。二人のラブシーンは二人が本当に愛し合っている感じが伝わってきたし、やっぱり特に達夫が千夏を本当に大切に守りたいと思っているのがわかって胸キュンでした。

他の登場人物もみんな良かったし、函館のうらぶれた感じも良く出ていました。決して美しいものを写している映画ではないのに映像も綺麗でした。祭りの場面は映画的躍動感があるし、海の場面の柔らかい光も、タイトル通りの繊細な光で心に残りました。

しかし拓児と千夏の困窮した生活と、さらに病気の父親の“世話”があまりにも衝撃的で、全体には物凄く暗いトーンの映画です。これだけ登場人物がみんな生きていて、きちんと「人物」が撮られた映画ですが、設定のあまりの暗さに、そこにだけはちょっとひっかかってしまいました。父親の病気のあの設定、そこまでしなきゃならなかったのかなぁ?ちょっと不幸すぎて、現実感がありませんでした。映画としては、押さえ目な演出なのに感情の移ろいや発露が細やかに捉えられていて、それが映画を動かしているような作品ですごく良いのですが、設定がちょっと劇的すぎる気がしました。でもラストも良かったし、エンディングの音楽がまたすごく美しく、映画に合っていて胸に沁みました。

『白ゆき姫殺人事件』も観ないと!

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