パラダイス3部作:希望

paradise3_hope

2014.2.22 ユーロスペース

パラダイス3部作:希望』/ウルリヒ・ザイドル/オーストリア・ドイツ・フランス/2012 ★★★★

思春期の肥満女子がダイエット合宿に参加して父親ほども歳が離れた医師に恋をする、という筋からして面白すぎるのですが、想像以上にユーモアたっぷりで面白かった!!ザイドル監督作品は初鑑賞でしたが、凄い監督に出会ってしまった、という感じです。ユーモラスなだけでなく、いちいち画面の構成が完璧に整っているし、色も綺麗で見応えがあります。あとわりと長まわしなので役者の素がとらえられているように 見えました。「ファスビンダーは死んだが、神は代わりにウルリヒ・ザイドルを与え た」とジョン・ウォーターズが言ったらしいですが、本当でした。でも観る前は、「ヨーロッパ映画だしユーロスペースだし、コムズカシイか眠くなるかその両方かの可能性大」と思って警戒し、3部作の3作目だけど予告編が一番面白そうだったという理由でこれを最初に観てしまいました。

それが良かったのか悪かったのか、他の2作品を観るまではわかりませんが、とりあえずこの『希望』はかなり笑えて、でもコメディという雰囲気とは少し違っていて、不思議な映画でした。いや、率直にいえば、肥満がズラッと並んで何か運動をしているだけで笑えたわけです。肥満がズラッと並んで規律正しく一つの動き(肥満解消のための運動)をしているのですが、機敏に動けるはずもなく、全然整ってないわけです。それがやたら笑えて、これはちょっとズルいなぁという気もしないではないのですが、笑いの種類が、アメリカ映画にデブが登場したときの笑いとは確実に違っていて、なんとも柔らかい笑いです。普通のコメディ映画で肥満が出てきたときの笑いが「肥満を笑ってはいけない」という日常のタブーみたいなものを逆手に取った笑いだとしたら、この映画の笑いはそうではなく、本当に単純に肥満の画的な効果で笑える、という感じです。その分こちらのほうが残酷ともいえますが、ヒロインのメラニー(80キロ肥え、じゃなくて超え)がだんだんすごく可愛く見えてくるのが魔法みたいです。そもそも子どもが肥満なのは親の育児の仕方に問題がある場合が多いわけで、彼女たちも親の悪口を言い合う場面があるので(3部作の1作目『愛』はメラニーの母親の話で、リゾートで若い黒人男子を買ってるらしい。そして肥満)バックグラウンドにはそういう暗いものがあることがチラチラ見えるし、メラニーが恋した相手の医師も実際ロリコンだし、そもそも合宿中誰も痩せた様子がないし、全然明るい映画ではないんですが、タイトル通り、なぜか「希望」を感じました。それはやっぱり、この(肥満の)思春期の少年少女たちが実に活き活き描かれているからだと思います。夜中にこっそりキッチンに行って食べものを盗むときのイベント感とか、密かに(のわりには派手に)開かれる飲み会のときの楽しそうなことといったらありません(王様ゲームで男子同 士がキスして大盛り上がりしたときに女子が放った「男たちの夜だわ!」の一言の秀逸さ)。

監督は、はじめは『パラダイス』という一本の映画で考えていたらしいです。でもどうしてもそれが良くなく、3本に分けることにしたそうです。そして、はじめは母の話、娘の話、叔母の話という順だったそうですが、あるときこの娘の話を最後にしてみたところ、パッと全体に希望が射したのでこの順に決めたそうです。1作目(母親が主役)、2作目(叔母が主役)の年増の女がそれぞれやばいことになってるので、まだ13歳のこの娘がダイエット合宿で友だちに囲まれて楽しそうにしている姿が希望になっているんだと思います。そのぶん、1作目・2作目で描かれる女がメラニーの将来の姿に見えてしまったらちょっと辛いものもあるかもしれませんが・・・。

やっぱり順番通り観るべきでした。1・2作目は明日観てきます。まだ何が「パラダイス」なのかわかりません。メラニーのふくよかな、肉のたゆたう大海原の身体のことかと一瞬思いましたが絶対違います。

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